「至徳(しとく)の風(かぜ) 静(しず)かに
衆禍(しゅか)の波(なみ) 転(てん)ず」
(2011年 真宗教団連合「法語カレンダー」5月のことば)
新緑の眩しい季節となりました。私の花粉症もようやく終わりにさしかかり気分も大変よくなってきました。
しかし、現に今、東日本大震災で被災され、終わりの見えない苦しみにさいなまれている方々が数多くおられます。自分を支えてきた多くの存在を失くされ、地震発生からもうすぐ2カ月を迎えようとしていますが、まだまだ復興への目途が立たない先が見えないという状況であると思われます。
私は、被災された方々が少しでも早く安心して暮らすことができるような状態になることを願って、自分にできるだけの協力をさせて頂こうと思います(実際に何ができるかお恥ずかしい限りですが)。
さて、話は変わりますが、今年4月9日より、西本願寺では「親鸞聖人750回大遠忌法要」が始まりました。西本願寺では親鸞さまの命日を1月16日としています。本願寺の第3代の覚如上人が親鸞聖人の生涯を著された『御伝鈔(ごでんしょう)』には弘長2年(西暦1262年)11月28日に親鸞さまが「ついに念仏の息たえおわりぬ」と示されてあります。このことから、東本願寺をはじめ、親鸞さまのご命日は11月28日としている真宗教団が多いのですが、西本願寺は明治時代以降、新暦に換算して、1月16日を命日と定めています。
そういうことから、西本願寺の親鸞聖人750回忌は明年1月16日ということになります。このたびの大遠忌法要は、4月5月6月9月10月11月と来年1月の9日〜16日に勤められます。
親鸞さまは、ある意味では、波瀾万丈の生涯を送られた方であると申してもよいと思います。その理由の一つは、当時の僧侶として、初めて正式に結婚されたということです。
「肉食妻帯」とよく言われますが、そのことが阿弥陀仏の救いの妨げにならないということを身をもってお示し下さったのです。
阿弥陀仏のはたらきは私たちのどんな煩悩をも包み込み、どんなに阿弥陀に逆らおうとも、全く知らん顔していても、阿弥陀さまはずっと「はたらき」続けておられるということです。
それは、すべてのいのちを救いたいという阿弥陀さまの願いから出た「はたらき」です。
阿弥陀さまは、すべてのいのちとともに生きてはたらいておられるのです。そのはたらきに、であった人間としての味わいを表わしておられるのが、今月の言葉であります。
今月の言葉も、教行信証の行の巻の中に出されています。その意訳された文(顕浄土真実教行証文類―西本願寺刊)を引いてみます。
『そこで、本願の大いなる慈悲の船に乗り、念仏の衆生を摂(おさ)め取る光明の大海に浮かぶと、この上ない功徳の風が静かに吹き、すべてのわざわいの波は転じて治まる……』(下線部が今月の言葉の意味)。
本願の慈悲の船に乗るというのは、阿弥陀仏のはたらきをそのまま喜ぶことのできる身となった者ということです。そういう人は、南無阿弥陀仏(お念仏)を称える身となり、本当の安心の世界が開かれることを示して下さったのが今月の言葉です。
被災された方々とともに生き、はたらいておられる阿弥陀さま。そのはたらきの中に私自身もあるのです。そう受け取っていく時、私自身の進む方向が問われ続けられるのでありましょう。
ですから、阿弥陀さまのみ教えを繰り返し聞かせて頂くことが大切なのです。
南無阿弥陀仏