「念仏(ねんぶつ)のひとを 摂取(せっしゅ)して
浄土(じょうど)に帰(き)せしむるなり」
(2012年 真宗教団連合「法語カレンダー3月のことば)
あの東日本大震災発生からもう1年が経とうとしています。被災された皆様に改めて御見舞申し上げます。
数多くの被害の中でも先が見えないのが福島第一原発の事故です。周辺の住民の皆さんは、未だに自分の家に帰ることもかなわず不便な生活を続けておられます。
全日本仏教会(全国の仏教関係の寺院の集まり)では地震後1年に合わせて「一周忌追悼法要と地震発生時刻にあわせて梵鐘を撞く」ことを全国の加盟寺院に会長(河野太通師)名で依頼を出され、当寺にもご依頼状が届けられました。
その依頼状の中に、
『……被災された皆さまにおきましては、さぞかし大変な、苦悩の日々を過ごされてこられたと存じます。この法要が、ご遺族はもとより、深い悲しみの中にある全ての方の心に寄り添い、これから共に歩むべき道を照らすことを願っております。……
』
と、書かれてありました。
素晴らしい言葉だと思いました。そして、深い悲しみの中にある全ての方々の心に寄り添って下さり、常に私たちの歩むべき道照らして下さる方が阿弥陀さまだと味あわせて頂きました。
浄土真宗のお勤めは、阿弥陀さまのお徳を讃え、そのおはたらきを喜びお礼を申し上げるという意味でします。ですから、阿弥陀さまや極楽浄土のことをお釈迦さまが説かれた「浄土三部経(仏説無量寿経・仏説観無量寿経・仏説阿弥陀経)」や同じように阿弥陀さまのはたらきを讃えられた高僧さまや親鸞さまの言葉をお勤めいたします。
さて、今月のカレンダーの言葉は、親鸞さまが大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)のはたらきを讃えられた和讃の言葉です。
大勢至菩薩は、浄土真宗のお仏壇ではお飾りしませんが、弥陀三尊(みださんぞん)と言って、真中に阿弥陀仏、右に大勢至菩薩、左に観世音菩薩を配し、大勢至菩薩が阿弥陀仏の智慧の徳をあらわし、観世音菩薩が阿弥陀仏の慈悲の徳を表しています。
「念仏のひとを摂取して 浄土に帰せしむるなり
大勢至菩薩の 大恩ふかく報ずべし」
至菩薩は阿弥陀さまの智慧の徳をあらわしていると申しましたが、今月の言葉もそのことを表わしていると思います。
今のままの私が浄土に生まれることはできません。何故なら生まれるだけの修行をしていないからです。では、修行を始めると言っても自分の体がそれについていけるのか。何時まで生きることができるのか。何の保証もないのです。
そんな私を浄土に生まれさせるために仏の智慧で私を包んで下さるのです。
勢至菩薩は念仏の教えをもって人々を導かれさらに浄土に往生させるとはたらいておられるのです。この勢至菩薩の大恩を深く報ずるべきであると親鸞さまはお教えになっています。
それは正に阿弥陀さまそのもののおはたらきのことです。そのはたらきがすべてのいのちを包んで下さっているのです。阿弥陀さまを讃えるお勤めをさせて頂くことで、深い悲しみの中にある全ての方々の心に寄り添って下さり、常に私たちの歩むべき道照らして下さる阿弥陀さまのはたらきを喜ばさせて頂きたいものです。
南無阿弥陀仏