(2015年 真宗教団連合「法語カレンダー」11月のことば)
今月の法語は、兵庫県の真宗大谷派(東本願寺)の円徳寺の住職をされていた藤元正樹氏(1929年〜2000年)の言葉です。
今月の法語は『願心を師となす』(2001年 東本願寺出版部刊)に出されている言葉だそうです。
「如来の本願」とは、「阿弥陀如来の根本の願い」ということです。
その本願が説かれているのは、『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』です。そこに、法蔵菩薩が成仏するために願われた「四十八の願い」が説かれています。
「法蔵」と言いますは、阿弥陀さまが仏の悟りを得られる前、菩薩さまであった時の名前です。
この四十八の願いを長い長い間の修行によって完成させ悟りを開かれ「阿弥陀」と名乗られたのです。
親鸞聖人は、その四十八の願いの中で特に第十八番目の願いが、「根本の願」であると受け取っておられます。
その十八番目の願いとは、
設我得仏 十方衆生 至心信楽 欲生我国 乃至十念 不取正覚 唯除五逆 誹謗正法
たとひわれ仏を得たらんに、十方の衆生、至心信楽してわが国に生ぜんと欲(おも)ひて、乃至十念せん。もし生ぜずは、正覚を取じ。ただ五逆と誹謗正法とをば除く
《西本願寺刊『註釈版聖典』より》
わたしが仏になるとき、すべての人々が心から信じて、わたしの国に生まれたいと願い、わずか十回でも念仏して、もし生まれることができないようなら、わたしは決してさとりを開きません。ただし、五逆の罪を犯したり、仏の教えを謗るものだけは除かれます。
《西本願寺刊『浄土三部経(現代語版)』より》
これが、第十八願の御文(ごもん)と読み下しと現代語訳です。
ここで誓われるように、阿弥陀さまは、私たち一人ひとりを必ず極楽浄土(阿弥陀さまの国)に生まれさせるとはたらきかけてくださっています。そのはたらきが、お名号(南無阿弥陀仏)となって私に届けられているのです。
お名号は「私に対するよび声」であるとも言われます。阿弥陀さまが私に対して「あなたのことを絶対に離さないよ、あなたを支え続け抱き続け、間違いなく浄土に生まれさせるから阿弥陀を頼りにしておくれ」とよび続けてくださっているとも聞かせて頂いています。
その阿弥陀さまのはたらきをそのまま受け入れて、「ありがとうございます」の思いから「南無阿弥陀仏」が私の口からこぼれてくださるのでしょう。それが称名念仏です。
阿弥陀さまの根本の願いによって、私のいのちが絶対に支えられてある世界があることを知らされてこそ、私の口から念仏が出るということ。また逆に、私の口から念仏が出ることは如来の本願のはたらきがあればこそと、教えてくださっている今月の法語なのでありましょう。
このご本願の文の最後に言われる「唯除五逆誹謗正法」について、親鸞さまは、仏さまの教えに背く者、教えを非難する者を排除するために付せられているのでなく、その罪の重いことを示して、そんな者こそ救わねばならないとはたらいてくださる阿弥陀さまであると『尊号真像銘文』という書物にお示しくださることです。
南無阿弥陀仏