(2016年 真宗教団連合「法語カレンダー」3月のことば)
今月の言葉は「正信偈」の「能発一念喜愛心 不断煩悩得涅槃(のうほついちねんきあいしん ふだんぼんのうとくねはん)」を意訳したものです。
この正信偈の御文の読み下しは、「よく一念喜愛(いちねんきあい)の心(しん)を発(ほっ)すれば、煩悩(ぼんのう)を断(だん)ぜずして涅槃(ねはん)を得(う)るなり」となります。
現代語版には《信をおこして、阿弥陀仏の救いを喜ぶ人は、自ら煩悩を断ち切らないまま、浄土で悟りを得ることができる》と示されています。
それは《私のことを必ずお浄土に生まれさせたいという阿弥陀さまの本願を聞き、全くの疑いもなく、阿弥陀さまの願いをそのままに受け取り喜ぶ者は、阿弥陀さまのはたらきによって、煩悩まみれの身のままであっても必ずお浄土に生まれ、阿弥陀さまと同等の悟りを開かせて頂く》ということです。
『しんじんのうた』では先月の言葉に続いて以下のようにうたわれています。
「本願成就の そのみ名を 信ずるこころ ひとつにて
ほとけのさとり ひらくこと 願い成たる しるしなり
教主世尊は 弥陀仏の 誓い説かんと 生(あ)れたもう
にごりの世にし まどうもの おしえのまこと 信ずべし
信心ひとたび おこりなば 煩悩を断たで 涅槃あり」
(下線部は今月の言葉)
このように、阿弥陀さまが私たち一人ひとりのことを救いたい、必ずお浄土に生まれさせ仏の悟りを開かせたいという願い(誓い)をたてられ、その願いを成就するために長い長い間修行されて、私たちが仏になることができる因(もと)が「南無阿弥陀仏」という名号になって、私に届けられ、はたらいてくださっているということ。
そのことを、教主世尊(=お釈迦さま)が、『仏説無量寿経・仏説観無量寿経・仏説阿弥陀経』(=浄土三部経)に説いてくださったことを教えて頂きます。
それは、お釈迦さまが、私たちに、その阿弥陀さまのはたらきをそのまま受け入れることを勧めておられるということであると親鸞さまは教えてくださいます。
そして、この勧めを聞いてそのまま信ずる心を私に起こるように仕上げてくださったのが、阿弥陀さまであるといえるのではないでしょうか。ですから、浄土真宗の信心は「如来よりたまわりたる信心」といわれます。
阿弥陀さまのはたらきが「南無阿弥陀仏」という言葉(=名号)となって、お釈迦さま、多くの高僧がた、親鸞聖人、さらに数え上げることのできないほどの多くの縁ある方々のおはたらきによって、私の所へ届けられているのです。
そんな阿弥陀さまのはたらきの中にいる私たちです。ともに阿弥陀さまはじめ多くの方々から大事にされている「仏に成るいのち」を戴いています。
お互いが、そんな大切ないのちを生きているという思いを大事にしてほしいというのが、阿弥陀さまのお心ではないかと思います。
南無阿弥陀仏