(2018年 真宗教団連合「法語カレンダー5月のことば)
今月の法語は親鸞聖人の著わされた『入出二門偈頌(にゅうしゅつにもんげじゅ)』の中の一文です。
この書物は、天親(てんじん)菩薩さまが著わされた『浄土論(じょうどろん)』に示された入出二門と曇鸞(どんらん)・道綽(どうしゃく)・善導(ぜんどう)の釈義とを讃嘆する偈頌(詩句)です。
「入出二門」ということについてですが、極楽浄土に往生するための行として、天親菩薩が『浄土論』に示された5種の行があります。この5種の行のことを「五念門(ごねんもん)」と言います。
「五念門」とは
@ 礼拝(らいはい)門 阿弥陀如来を礼拝すること
A 讃嘆(さんだん)門 光明と名号のいわれを信じ、仏名を称えて、阿弥陀仏の功徳を 讃えること
B 作願(さがん)門 一心に専ら阿弥陀仏の浄土に往生したいと願うこと
C 観察(かんざつ)門 阿弥陀仏・菩薩のすがた、浄土の荘厳相を思いうかべること
D 回向(えこう)門 自己の功徳をすべての衆生にふりむけて、ともに浄土に往生し たいと願うこと
以上のように『浄土真宗辞典』(本願寺刊)には示されてあります。
そしてこの五念門の行を修めることによって、浄土に往生して得る五種の功徳があります。同様に浄土真宗辞典から引かせて頂きます。
@ 近門(ごんもん) 礼拝によって仏果(仏のさとり)に近づくこと
A 大会衆門(だいえしゅもん) 讃嘆によって浄土の聖者(阿弥陀仏の聖衆)の仲間に 入ること
B 宅門(たくもん) 作願によって止(散乱した心を離れ、思いを止めて心が寂静にな った状態)を成就すること
C 屋門(おくもん) 観察によって観(智慧で物事の道理をありのままに観ること)を 成就すること
D 園林遊戯地門(おんりんゆげじもん) 回向によってさとりの世界から迷いの世界に たちかえって、自在に衆生を教化救済するこ とを楽しみとすること
このように示さるのですが、@〜Cが菩薩の入門(浄土への門を入る)で、Dが出門(衆生救済のため浄土から出る)ということで、「入出二門」ということになります。
天親さまは菩薩の行として、この二門を説かれたと考えられますが、親鸞さまは、この行は法蔵菩薩さま(阿弥陀仏になられる前のお名前)がすべて修められて、私たちに回向してくださってあるとお示しくださいました。
さて、5月の言葉は
「かの如来の本願力を観ずるに 凡愚遇うて空しく過ぐるものなし」
です。現代語版には以下のように書かれてあります。
「阿弥陀仏の本願のはたらきに遇ったものは、愚かな凡夫であっても、いたずらに迷いの生死を繰り返すことはない」
阿弥陀さまの本願のはたらきに遇うためにはどうしたらいいのでしょうか。
本願寺の8代蓮如上人は繰り返し「聴聞」の大切さを説いておられます。「聴聞」は仏さまの教えを聞くということですが、そのためのご縁、例えば、ご法話を聴く、経典(聖典)の御文に聞く、仏教書を読む、人に尋ねるなど、たくさんの聴聞のご縁があると思うのです。そんなご縁でいつの間にか「南無阿弥陀仏」を喜ばせて頂く身と成れば有難い事だと思います。ただ、喜べなくても、阿弥陀さまは絶対見捨てられることはありませんが………。
南無阿弥陀仏