(2019年 真宗教団連合「法語カレンダー」4月のことば)
桜(ソメイヨシノ)の開花の便りが各地から届けられています。今年、大阪は東京よりも遅い開花宣言となりました。桜の開花宣言は、各地の標本木に5輪以上開花すると宣言されるそうです。以前は5輪より少なくても開花とされていたようですが、今は「標本木で5輪以上開花」という条件を満たしていないと、その地方の開花宣言とはならないと決められていると気象予報士の方がテレビで言っておられました。
ところで「開花宣言」がされますと、何故か突然、自分のまわりが花いっぱいになるような気持ちになります。開花宣言があってもなくても、暖かくなって色々なお花がいっせいに咲きだす時期なのですが、「開花宣言」という言葉を聞くことでお花がいっぱい咲いて自分の気持ちが明るくなるような気がします。
ひとつの言葉で、明るい気持ちになり安心させられる。お念仏(南無阿弥陀仏)もそういう言葉ではないでしょうか。お念仏(お名号)は、たった一言で私を包み安心させてくださる言葉なのです。
今月の法語は、阿弥陀さまのはたらきをそのまま受け取らせて頂くとかならず名号(南無阿弥陀仏)を称えさせて頂く身になることを表した言葉です。
さて、今月の法語は『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』という親鸞聖人の著わされた浄土真宗の根本聖典(ご本典)の信の巻の中に出されている文章です。その現代語訳を少し前の文章から紹介します。
「至心と信楽と欲生とは、その言葉は異なっているけれども、その意味はただ一つである。なぜかというと、これらの三心は、すでに述べたように、疑いがまじっていないから真実の一心なのである。これを金剛の真心という。この金剛の真心を真実の信心というのである。この真実の信心には、必ず名号を称えるというはたらきがそなわっている。しかしながら、名号を称えていても必ず他力回向の信心がそなわっているとは限らない」
〔『顕浄土真実教行証文類(現代語版)』本願寺刊より抜粋〕(下線部が今月の法語)
引用がたいへん長くなりましたが、ここでは至心(ししん)・信楽(しんぎょう)・欲生(よくしょう)という三つの心について述べられています。この三つの心(三心)は、『仏説無量寿経』に説かれている48の願い(四十八願)の第18番目の願い(第十八願)のご文の言葉です。
「設我得仏 十方衆生 至心信楽 欲生我国 乃至十念 若不生者 不取正覚 唯除五逆 誹謗正法」
「わたしが仏になるとき、すべての人々がまことの心(至心)から信じ喜び(信楽)わたしの国に生れたい願い(欲生)、わずか十回でも念仏して(乃至十念)、もしうまれることができないようなら、わたしは決してさとりを開きません。ただし、五逆の罪を犯したり、仏の教えを謗るものだけは除かれます」〔『仏説無量寿経(現代語版)』より)
この本願のご文の三つの心が別々の心ではなく一つの心であり真実の信心であると親鸞さまは解き明かしてくださいます。それは、疑いの心がまったく混じっていない如来の本願力によって回向された心だからです。絶対にくずれることのない金剛の真心でありそれを真実信心というのですとお示しくださっています。
阿弥陀さまは、私たち一人ひとりに本当の安心を与えたいと、絶対に裏切ることのない真の心で私たちに向かって「どうぞ阿弥陀のはたらきをそのまま受け取って、お念仏してください」とはたらき続けてくださっているのです。
私の口から出るお念仏は、阿弥陀さまのおはたらきで称えさせて頂き阿弥陀さまと共にあることを喜ばせて頂きたいものです。
南無阿弥陀仏