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浄土真宗本願寺派 西法寺 大阪府柏原市

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浄土真宗とは

今月の法話

2020年9月の法話
  「自分のあり方に 痛(いた)みを感(かん)ずるときに 
        人の痛みに 心(こころ)が開(ひら)かれる」 
          (2020年 真宗教団連合「法語カレンダー」9月のことば)
 残暑が厳しく、9月に入っても一気に涼しくはならないようです。しかし、いずれ涼しくなり寒くなっていくことは、地球の気候上で大異変が起こらない限り、間違いないと思います。
そんな風に季節は移り変わっていくことになっていると、日本に住んでいる私たちは身をもって感じていると思います。
 ところが、熱帯地方に住んでおられる方々は、日本的な四季の移り変わりを理解することができない方々も大勢おられることではないかと思いますし、逆に、私自身が熱帯地方の方々の暑さに対する感情を理解することができないように思います。
 相手の感情を理解するということは自分が同様の立場に立ってこそわかると、よく言われることですが、 今月の言葉は、そのようなことに対しての言葉です。

 「自分のあり方に痛みを感ずるときに人の痛みに心が開かれる」、宮城しずか(「しずか」は豈に頁と書いて一文字とし、しずかと読む)先生(1931年〜2008年)の言葉です。先生は九州大谷短期大学の名誉教授をしておられました。

 先月8月26日、プロテニスプレイヤーの大阪なおみさんは、黒人への差別的暴力に対しての抗議を示すため「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」テニス大会の準決勝出場をボイコットされました。大坂さんは、SNSで、「私はアスリートである前に、一人の黒人の女性です。私のテニスを見てもらうよりも、今は注目しなければいけない大切な問題がある」と表明されたということです。大坂さんだけでなく、アメリカではプロバスケットボールNBAや野球のメジャーリーグのチームなどで抗議のボイコットがおこなわれているということです。

 黒人であるという理由で、一部の白人から差別的扱いを受けること、そんなことがアメリカの社会の中で何度も繰り返されてきました。大坂さんもアメリカの社会で生活される中で差別的扱いをされたことがあるかもしれません。黒人として痛みを強いられている自分が、黒人という理由で不当な差別的扱いをされている人々に共感し、抗議されるのは当然のことだと思います。
 自分のあり方に痛みを感じているから人の痛みを自分の痛みとして抗議の行動となったことだと思います。ただその行動が、どうしても自己中心的になり暴力的になり暴動化してしまうこともあります。
 いのちは平等です。一つ一つのいのちが本当に大切にされることにより差別もなくなりますし戦争のない世界も実現することを教えているのが仏教であると思いますが、そういう教えの通りにはいかないのが人間です。私です。
 
 今月の言葉の「自分のあり方に痛みを感ずる」ということは、親鸞さまがご和讃に申されますように「虚仮不実のわが身にて 清浄の心もさらになし(嘘いつわりばかりのわが身であり、清らかな心などあるはずもない)」という自分のありように気づかされることだと思います。しかし、その気づきは阿弥陀さまや多くの仏・菩薩・七高僧さま・多くの人々など他からの働きかけによってもたらされるものでしょう。自分の力でその気づきを得たと思い込むことは多くの間違いを起こしてしまうことにつながりやすいものですから。
 
 阿弥陀さまはお念仏(南無阿弥陀仏)となって私にはたらきつづけてくださっていると親鸞さまはお教えくださいます。煩悩に眼さえられて自分のあり方をすぐに見失ってしまう私に、常にわが身を照らしてくださる阿弥陀さま、その念仏のはたらきをそのまま受け入れさせていただくことの大切さを示してくださった今月の法語です。みなさまお念仏申しましょう。

                                    南無阿弥陀仏