(2021年 真宗教団連合「法語カレンダー」9月のことば)
今年の夏は高温で例年にない集中豪雨が7月と8月にあり、各地に大きな被害をもたらしました。この場を借りてですがお見舞い申し上げます、お盆に3日間雨が降り続くという経験は自分の記憶の中ではなかったような気がします。お盆と言えばカンカン照りと相場が決まっているように思っていましたが、今夏は秋雨前線の影響で大荒れの天気でした。地球温暖化の影響もあるのでしょうか。毎年少しずつ気温も高くなっているようですし、新型コロナウィルス感染症も第5波が来て感染者数が大変多くなって、大阪府では連日2000人以上の方の感染が報告されています。
不安なことばかりです。こんな時、自分の不安を解消してくれるのは神さま仏さま、宗教だと考え、祈り、願うことで不安を解消しようとする方もおられます。恐ろしいものから、我が身を守りたいというのが本当の気持ちですからそれも致し方ないのかもしれません。
しかし、浄土真宗は、自分の不安を無くすために、自分の欲を満たすために、仏さまにお祈りし、お願いする宗教ではないと言われています。
さて、今月の法語は、真宗大谷派の学僧であられた安田理深先生(1900〜1982)の言葉です。
「如来の願心が我一人に成就したのが信心である」
「如来」は阿弥陀如来さまのことです。その阿弥陀さまの「願心」と申しますのは、阿弥陀さまが衆生救済を願う心です。『仏説無量寿経』には法蔵菩薩(阿弥陀如来)が誓われた48願が説かれています。親鸞さまはこの48願の第18番目の願いがご本願(根本の願い)であると示してくださいました。
その願文は「たといわれ仏を得たらんに、十方の衆生、至心信楽してわが国に生ぜんと欲ひて、乃至十念せん。もし生ぜずは、正覚を取らじ。ただ五逆と誹謗正法とをば除く」『浄土真宗聖典(註釈版)』です。
その現代語訳は、
≪わたしが仏となるとき、すべての人々が心から信じて、わたしの国に生れたいと願い、わずか十回でも念仏して、もし生まれることができないようなら、わたしは決してさとりを開きません。ただし、五逆の罪を犯したり、仏の教えを謗るものだけは除かれます。≫と『浄土三部経(現代語版)』には記されています。
このように、阿弥陀さまは、あらゆる人々を救いたい、阿弥陀仏の極楽浄土に生れさせたいという心(願心)から「南無阿弥陀仏(名号)」という声の仏さまとなっての私たち一人ひとりに向かってはたらきかけてくださっているのです。
「私たち一人ひとりを救いたい、本当の安心を与えたい」そのような阿弥陀さまの心をそのままに「ハイ、わかりました」と受け取らせて頂き「ありがとうございます」と念仏させて頂くことが「我一人に成就する」ということでありましょう。そのことを「信心」というのですと表してくださった今月の言葉であると思います。
阿弥陀さまは私たち一人ひとりの姿を見ぬいて、一人ひとりに向かってはたらきかけてくださるのです。私から阿弥陀さまにお願いするのではなく、阿弥陀さまが私に願いをかけてくださっているということなのです。阿弥陀さまから阿弥陀さまを頼り信ずる心(信心)をいただくということです。
私たちが住んでいる世界では、何が起こるかわかりません。それを教えて下さるのが仏教です。災害、病気など、自分にとって厄介なことが起こっても、それを受け止めて生きていくことを教えるのも仏教だと思います。
阿弥陀さまは常に私を支え続けてくださり、私の苦しみを受け止め引き受けてくださる仏さまです。そんな阿弥陀さまと一緒だと喜ばせて頂きたいものです。
南無阿弥陀仏